診療データのご紹介

肺高血圧症は第1群から第5群の病型に分かれますが、図1にありますように当科での診療は第1群の肺動脈性肺高血圧症の患者さまが最も多く、続いて慢性血栓塞栓性肺高血圧症、肺疾患に合併する肺高血圧症が続きます。

図1 呼吸器内科における肺高血圧症診療(病型別比率)
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また図2にありますように、最も多い病型である肺動脈性肺高血圧症(全129例)の中では、膠原病(強皮症やSLEなどが含まれます)に伴うものが最も多く、膠原病を専門とする北海道大学病院 リウマチ・腎臓内科 からの紹介が多いことを反映しています。

図2 呼吸器内科における肺動脈性肺高血圧症診療(病型別比率)
図2

次の図3は、2019年までの年別の新規症例数の推移を示しています。2010年まで年々増加し、その後は年に約20名の患者さまが新たに肺高血圧症と診断されています。

図3 年別新規・累計肺高血圧症患者数の推移
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北海道大学病院での他科との連携~早期診断・治療実現のために

肺高血圧症は疾患特異的な症状が乏しく、診断や治療が遅れてしまうことが多い疾患です。
その中で私たちは私たち以外の診療科や他施設と連携することが早期診断・治療を達成する上でとても重要と考えています。
例えば北海道大学病院 リウマチ・腎臓内科は全道から膠原病の患者さんの紹介を受け、高いレベルの診療・研究を行っています。強皮症やSLEなどの膠原病は肺高血圧症の重要な基礎疾患でもあり、私たちも多くの患者さんの紹介を受け、協力して診断・治療にあたっています。
また、循環器内科 とは心臓エコーや運動負荷試験、消化器内科 とは門脈圧亢進症に伴う肺高血圧症、循環器外科 とは慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する内膜摘除術、放射線科 とはCTや心臓MRI、などにおいて緊密な連携を保ち現在に至っております。
これらの協力体制は早期診断や最適な治療を行うために非常に重要であり、その重要性は今後更に増していくと考えています。

病病・病診連携の重要性

私たちが診療にあたってきた患者さんのほぼ全員が北大病院の他科や北大病院以外の病院・診療所から紹介頂いた方々です。
また、診断・治療導入後の診療の継続を我々以外の医療施設にお願いすることも多々あります。
したがって、肺高血圧症の患者さまを診療させて頂くにあたって他診療科や紹介して下さる病院・医院との連携は極めて重要です。
今後はこれらの連携体制をさらに充実させて、道内のより多くの患者さまによりよい診療が提供されるために役立って参りたいと思います。

特殊な検査について

近年肺高血圧症と遺伝子異常との関連が重要視されています。
その中で、遺伝子解析については慶応義塾大学(循環器内科) に依頼し施行できる連携体制が既に構築されています。
また、日本の中で肺高血圧症を精力的に診療している病院と診療、あるいは臨床研究といった面でも協力できる体制が整っています。
肺高血圧症は普通の高血圧症や糖尿病などと異なり患者さまが沢山いらっしゃる疾患ではありませんので、遺伝子解析や上記の心臓MRIを中心とする特殊性の高い画像検査、さらに専門性の高い施設との連携体制は非常に重要と考えています。