北海道大学大学院医学研究院 呼吸器内科学教室 北海道大学病院 呼吸器内科 Department of Respiratory Medicine, Faculty of Medicine, Hokkaido University

2012 特集記事

2012 特集記事特集 No.3 現地レポート

留学だより 75期 小田島 奈央

75期 小田島 奈央

私は、平成21年4月より3年3ヶ月の間、アメリカノースカロライナ州のチャペルヒル市にあるノースカロライナ大学に留学し、Claire Doerschuk先生のもと研究を行ってきました。
西村教授にお許しをいただき、医局員の先生方に送り出してもらったおかげで、医学部生の頃からの夢であった、将来の一時期には海外留学をして研究生活を送りたいと思っていたことを実現することができました。
以前Doerschuk先生のもとに留学されていた先輩を介して、ATS(アメリカ胸部疾患学会)にてDoerschuk先生に直接会う機会があり、好中球と血管内皮細胞の接着メカニズムといった基礎的な研究からCOPDや肺炎における好中球の新しい役割といった臨床につながる研究までの幅広い内容とDoerschuk先生の温厚な人柄を知り、ここのラボでお世話になり研究したいと決めたのがきっかけでした。

臨床医にとって海外研究留学することの一番の目的とメリットは、興味のある研究に最大限の時間とお金を使うことが許される、ということだと思います。一時的に臨床能力が衰えるという医者としてのデメリットはありますが、一定期間研究のことだけを考えて過ごす時間がとれるのは贅沢な話です。
基礎研究の場合は結果がすぐに臨床に直結することは少ないですが、今までわかっていなかったことを新しく発見し生命科学の発展に貢献できるチャンスが与えられていると思うと、臨床医として目の前の患者さんを救うことと同じくらい研究者としての生活はエキサイティングなものだと思います。
アメリカ人以外にも各国(もちろん日本も含め)から来ている研究者と研究の話をし、時にはプライベートでも交流する機会を持て、視野が広がることは海外留学の第二の醍醐味です。

当たり前のようですが、こちらで出会う人はみなバックグラウンドや考え方が全く異なります。どんな苦労をして今のポジションを得ることができたのか、今現在どんな研究生活・私生活を送っているのか、これから将来はどうしたいのか、みんな様々に違います。留学中に学んだ経験を持ち帰って自国で研究生活を継続している人・逆に臨床への思いを強めた人・自国に帰らずさらなる研究をアメリカで継続していく人・違う職種に目覚める人など、留学前に思っていた留学期間終了後の将来設計が、留学期間中に大きく変化した人を間近でたくさん見てきました。
そういう自分も結婚というプライベートなことがきっかけで、自分の将来設計を考え直すことになり、西村教授をはじめ呼吸器内科のみなさんのご理解のもと、留学期間終了後も医局には戻らずにアメリカで働く道を模索することになりました。
研修医の頃は救急医療と病理学に興味があり、大学院の頃は間質性肺炎の病態に興味を持ち、留学してからは感染免疫に興味を持ち、今はアメリカで臨床をすることに興味を持っています。
最初からこうなることがわかっていたら随分な回り道をしたことになり、無駄な時間を過ごしているようですが、その時々で出会った先生方や患者さん・友人などすべてのことが要因して現在の自分がいることを考えると、こんな人生も悪くはないかと思う今日この頃です。
医師一人ひとりの多様性を認めてチャンスを与えてくれる呼吸器内科の大きな心に感謝し、自分にできることを日々行っていくつもりで毎日生活しています。