北海道大学大学院医学研究院 呼吸器内科学教室 北海道大学病院 呼吸器内科 Department of Respiratory Medicine, Faculty of Medicine, Hokkaido University

2012 特集記事

2012 特集記事特集 No.3 現地レポート

留学だより 79期 渋江 寧

79期 渋江 寧

平成22年度に北海道大学大学院医学研究科に入学致しましたが、西村教授のご高配を賜り、入学早々東邦大学医学部微生物・感染症学講座に国内留学させて頂きました。
私は平成15年度に北大呼吸器内科に入局し、関連病院研修を続けていくうち、感染症診療に強く興味を持つようになりました。また、基礎研究にも興味が湧いてきた時期でもありました。西村先生にこのことをご相談させて頂き、東邦大学医学部微生物・感染症学講座の舘田一博先生をご紹介して頂いたことが契機で現在に至ります。

東邦大学医学部微生物・感染症学講座は舘田教授を中心とした国内屈指の微生物・感染症学講座であり、全国から菌株の解析依頼があり、菌のストックも相当なものです。全国から研究生が集まっており、感染症内科医、呼吸器内科医、麻酔科医、小児科医、総合診療医、臨床検査技師、薬剤師などバックグラウンドが違うため、同じことを話していてもその視点の違いが勉強になります。
基礎研究の知識が全くないまま東邦大学に来たために当初は全く話している内容について行けませんでしたが、現在は自分のテーマとしてノックアウトマウスを用いた感染実験を行い、菌側の病原因子と免疫応答の関わりや耐性菌の遺伝子に関する検討を中心に行っております。その研究の一つをICAAC(Interscience Conference of Antimicrobial Agents and Chemotherapy)という国際学会で発表させて頂く機会も頂きました。
それ以外にも大阪大学が主催している「タイ・ミャンマー国境現地で学ぶ熱帯感染症研修」にも参加させて頂き、約2週間と短期間ながら、熱帯地域ならではの症例を経験し、医療経済の違いを肌で感じることができたのも非常に貴重な経験でした。
こちらにきて主に基礎研究を行っておりましたが、感染症診療を行っている医師との繋がりもでき、もともとこの国内留学には臨床感染症学を学ぶ目的もあったために2012年10月からは関東労災病院総合内科・感染症内科で臨床研修をさせて頂くことになりました。
この機会を与えて下さった西村教授を始め、多忙な業務において多大なるご迷惑をおかけしております医局の先生方、同門の先生方に厚く御礼を申し上げます。

最後に、このページを見て下さった学生、研修医の皆様へ。私は市中病院研修をした際に消化器内科、循環器・代謝内科、呼吸器内科、一般内科など、毎年違う環境にさらされることで、総合診療の重要性を認識するようになりました。これは手技の習得のことだけをいっているのではなく、最初に特定分野に固執せずに研修を行うことが、総合内科的診療スタイルを支える一助になり、内科医として重要な臨床推論力の強化に繋がると思っております。このような研修が可能なのも呼吸器内科の魅力の一つです。
1人で全てをまかなえる人はいないわけで、別に入局しなくても、今後それぞれの科で協力し合える人たちとの出会いがあることも医局ローテーションの特徴の一つですから、もしご興味あれば呼吸器内科も研修先の一つに考えてみて下さい。私たちが経験してきたことを先生方にお伝えし、逆に私たちも先生方から刺激を受け、さらに精進したいと思っております。